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あたたかな光の灯る師走

8月23日
読了時間: 3分

更新日:3 日前


2024年12月10日付の陸奥新報「望遠郷」に掲載されたエッセイです。


ドイツでは、クリスマスの4週間前から「アドヴェント(待降節)」が始まります。ろうそくを灯し、アドヴェントカレンダーを一日ずつ開け、クッキーを焼きながらクリスマスを待ちます。

暗く長いベルリンの冬を照らす、クリスマスのあたたかな光と、人々の暮らしについて綴りました。



陸奥新報「望遠郷」第4回 あたたかな光の灯る師走

(2024年12月10日掲載)


津軽でも今頃の季節になってくると暖かい日差しが心地よかった秋に別れを告げ、どんよりとした灰色雲に覆われた空の景色が多くなってくる。私が留学していたベルリンの冬は実は津軽とよく似ている。ベルリンは樺太北部とほとんど同じぐらいに緯度が高いが、北大西洋海流という暖流のお陰で緯度の割には温かく、冬の寒い時でもマイナス2度ぐらいとさほど寒くはない。ただ日照時間が短い。どんよりした灰色の雲のせいで精神的に鬱になりやすくなる。津軽でも「雪国うつ」があるからその辺もよく似ている。


 そんな陰鬱な日常に、明るくあたたかい光を差してくれるのがクリスマスのイベントだ。日本でクリスマスといえば12月24日のイブ、25日の当日と2日間しかお祝いはしないけれど、ドイツではアドヴェント(待降節)というキリストの降誕を待ち望む期間があり、クリスマス当日の4週間前の日曜日から始まるこの期間を毎日あの手この手で楽しんで過ごす。アドヴェンツクランツというもみの木などで作られたリースに4本の太いろうそくを立てたものを飾り、毎週日曜日ごとにその一本一本に火を灯したり、アドヴェンツカレンダーという12月1日から24日までが窓になっているカレンダーを毎日楽しみながら開けたりしながら、クリスマスまでの日々を指折りに数えて楽しみに待つ。


 また、このアドヴェントの期間中にドイツ人はものすごい量のクッキーを焼く。自分の家で食べるだけでなく友人などにお裾分けをし、各家庭それぞれの味を自慢する。私もクリスマス前の最後のピアノのレッスンの時間に、生徒さんたちからクリスマスプレゼントに添えられる形で自家製クッキーをいただくことが多かったけれど、各家庭にそれぞれの味付けがあり、とても美味しかった。このようにドイツ人は自分の手作りのものを親しい人たちにプレゼントすることが大好きだ。12月頭ぐらいに焼いたクッキーを12月中旬ぐらいにいただくわけだから、パリッとしていなかったり味が若干落ちていることも正直あったけれど、彼らからの気持ちが嬉しかった。こうしたことから、ドイツでは素朴で飾らない性質を持つ人々が多くいるように感じたものだ。そして24日のクリスマスイブには本物のもみの木を部屋に運び入れ、飾り付けをする。ベルリンでは5階建ての集合住宅でもエレベーターがない建物が多いのだけれども、お父さんたちが真っ赤な顔で息を切らしながら、もみの木を自宅まで運び入れる光景をよく目にした。それは体格がよく身長も高いドイツ人だからできる技だなと、当時は感心して眺めていたものだ。


 飾り付けられたもみの木の下には、それぞれが用意したプレゼントを並べる。このプレゼントがすごい量なのだ。クリスマスプレゼントのための出費は2023年の統計では一人当たり507ユーロ(約8万円)だそうで、普段は節約家で有名なドイツ人がここぞとばかりに気合いを入れて散財する様子が窺える。この日もらうプレゼントには、万が一気に入らなければ交換してもらえるようにレシートを添えておくこともあるところは、なんとも合理的でドイツ人らしい。


陸奥新報「望遠郷」第4回 あたたかな光の灯る師走(2024年12月10日掲載)
陸奥新報「望遠郷」第4回 あたたかな光の灯る師走(2024年12月10日掲載)

     

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