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心ときめく誕生日

8月23日
読了時間: 3分

更新日:8月31日




2025年3月18日付の陸奥新報「望遠郷」に掲載されたエッセイです。

ドイツでは、誕生日を迎える本人が職場にケーキを持参したり、自らパーティーを企画したりする習慣があります。

日本とは異なる誕生日文化と、そこに感じた魅力について綴りました。



陸奥新報「望遠郷」第6回 心ときめく誕生日

(2025年3月18日掲載)


桃の節句を迎え、陽の光も少しずつ柔らかくなり春の訪れを感じ始める弥生の月。津軽でも雪深い日々に終わりを告げようとしている。私ごとで恐縮だが3月は自分自身の誕生月であり、この時期になるとドイツでの誕生日のことをよく思い出す。日本でもドイツでも自分がこの世に生まれた日というのは特別なものだ。お祝いのメッセージをもらったり、美味しいケーキや料理を食べたりする方が多いのでは。ドイツでも日本でも誕生日は祝うべき喜ばしい日というのは同じなのだが、祝い方は随分と異なる。特に大人になってからの誕生日の祝い方がドイツと日本とでは全くと言っていいほど違うのだ。



 日本では子どもの頃、誕生日当日は家族とお祝いをして、週末にはお友達を家に呼んでお誕生日会を開いたりする。しかし大人になり歳を取ると、誕生日を祝ってくれる友人知人も少なくなり、祝ってくれるのは家族だけという人も多くなる。そもそも大人になれば、あまり誕生日にこだわりがないという人も多いのではないか。それと比べてドイツ人の誕生日にかける情熱は大人になっても衰えることがなく、その熱量は日本人が想像する以上のものだ。まず誕生日を迎える本人が主体となって自らの誕生日を祝うのだ。例えば誕生日当日が仕事の時にはケーキを自分で焼いて職場に持っていき、それを同僚に振る舞う。「今日は自分の誕生日です」と自らアピールをすることで、いろいろな人たちから「おめでとう!」という言葉をかけてもらう。ベルリンに住んでいた時は、訪ねて行った先の事務員のデスクにケーキが置いてあり、聞くと今日が誕生日だということが何度もあった。もちろん私はその人のことは全く知らないけれども「おめでとう!」と声をかける。このような習慣は、誰からも誕生日であることを気づいてもらえずショックを受ける、ということが発生しないという意味において素晴らしいことなのではないかと思う。このように職場に自ら誕生日ケーキを持って行くために、朝から大きな手作りケーキを入れたケースを持って出勤する人の姿をドイツではよく目にしたものだ。



 また誕生日パーティーも盛大に祝う。2、30人招くことも珍しくない。もちろん主催者は自分である。この誕生日パーティーだけれども、大人数でお祝いをすれば騒音もたつ。だがドイツ人はその辺について寛容だ。アパートの入り口のあたりに「○ 号室のものですが、何月何日誕生日会をするので夜少しうるさいかもしれません。でもすぐに警察は呼ばないでください。呼び鈴を鳴らしてくだされば対応します」という旨の張り紙がしてあれば、多少うるさくてもお互い様ということで許容してくれることが多い。



 そして忘れてはいけないことがある。ドイツでの誕生日に関しては暗黙のルールが存在する。それは、ドイツでは誕生日当日より前に「お誕生日おめでとう!」といわれると不幸になる、早死にするという迷信があるため、前倒しでお祝いを述べることは基本的に避けた方がいいということだ。お祝いのつもりでかけた言葉が、不幸の言葉として受け止められてしまっては洒落にならない。近くにドイツ人の知り合いがいる方はお気をつけを。



 陸奥新報「望遠郷」第6回 心ときめく誕生日 (2025年3月18日掲載)
 陸奥新報「望遠郷」第6回 心ときめく誕生日 (2025年3月18日掲載)

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